小話 ざくろ美人
私が小学生のころの話だ 近所のザクロの実が成る大きな木のある家があった。
その家のブロック塀で覆われていたが小学生のわたしは途中途中に開いてある穴に足をかけてよじ登ってザクロの実を拝借していた。
とある日、学校の帰りしに口寂しくなりいつものようにザクロを拝借しようと
ブロック塀の穴に足をかけよじ登った。
そして一番採りやすい位置のザクロに手をかけたところで
縁側に人がいるのに気付いた。
わたしはまずい!と思って一瞬動きを止めた。不安定な足場なので動きたくとも
動けない状態であり、また音を鳴らさずに降りるのもまた難しい。
変な体勢で動きを止めてどうしようと焦って思案していたら
縁側の家の人がピタリと動きを止めた。
こちらに気付いて目が合ったのだ。
どうやら家の娘さんのようで高校生ぐらいの人だ。
よく見てみると縁側に腰掛けて相手もザクロを食べている、
というか貪りついてたようで
両手の指先と口周りが真っ赤。足元にもザクロの種が散乱していた。
今思えば相手の年頃の娘さんで、ばつの悪いところ見られて
動きが止まっていたのだと思う。
そしてよく判らないにらみ合いは続いた。
お互いピクリとも動かない。
自分の体感では結構な時間だったように思うが実際のところはわからない。
一応続く。