dedpの思いつき哲学

何か思いついたものそのまま書きながら考えたり。過去の黒歴史ノートが火を噴いたり。

思いついた小話 髪ノ毛村

とある昔に大飢饉に襲われた村があった。

 

それはもう酷い飢饉で、収穫の翌週から食うものが無い状態であった。

 

翌一ヶ月で付近の草木を食い潰し

翌一ヶ月で付近の犬猫を含む動物を食い潰し

翌一ヶ月で付近の虫を食い潰し

翌一ヶ月で付近の草木の根を食い潰し

翌一ヶ月は水で凌いだ

 

そんなありさまで遂にいよいよかという時

とある村人が今日を凌ぐ名案を思いついた

「髪を切って食えばよい」

身だしなみに気を使える状態でない村人達の髪はぼうぼうとしており

量は十分であった。

 

人は飢餓には勝てぬ。

村人達は仕方なしに男女子供老人問わず毛髪を切り、鍋にあつめだした。

 

それを聞いて驚いたのは寺の坊主だった。

裸足で駆け出して鍋の前で血相を変えて止め出した。

 

坊主は語る「それだけはやってはいかぬ、人道を踏み外すぞ」

村人は語る「坊主様は毛髪がないので鍋の配分があたらぬ。申し訳無い。しかしそれ故で止めるのはあんまりでございませんか」

 

他の村人も同様の意見である。

 

坊主は帰って寺で泣いた。村の飢饉を止めることが出来なかった事。己の村人からの信頼があまりに薄かった事。そして村の現状に。そして坊主は髪鍋を止める手段がなかった。

 

そしてその日の晩

 

悲しき晩餐ではあるが村人達は久々に固形物を口に入れる事ができる嬉しさを隠しきれなかった。ただ心配は髪鍋が食えたものかどうかということであった。

 

ただ長期の飢餓を経た村人達が食した後の感想は「存外、人の毛も食えたものではないか」

 

後の村の経過は語るに足らず。悲しき村の惨状がさらに増しただけであった。

 

翌一ヶ月に寺の坊主はこの惨劇を繰り返さぬようにと村に髪ノ毛村と命名しその村を去った。